わが子の進路 目標は体験や出会いから
テレビドラマ「おかえりモネ」のこと
宮城県を舞台にしたNHK朝の連続テレビ小説「おかえりモネ」が話題です。モネは「誰かの役に立ちたい」と自分の将来を模索します。大山主のサヤカや医師の菅波、気象予報士の朝岡らとの出会いによって気持ちが揺さぶられていきます。気象予報士をめざすきっかけは、朝岡の「気象予報は未来を予測する世界なのだ」という言葉でした。
中高生はいま
さて、今の中高生がおかれている状況を見てみましょう。毎日6時間の授業に部活、夜は塾、休日も部活や習い事。忙しく一日を過ごしている子どもが多いのが現実です。世の中に目を転じると、ヤングケアラー(※1)、LGBTQ(※2)、校則問題、奨学金、バイト難、貧困などの課題や困難が若者の周辺にあふれています。
このような中、中高生はよくがんばっていると感じます。しかし、コロナの影響もあり、不登校や自傷行為に走る子、自殺する若者も増えています。
「生きづらさ」を抱えた子どもたちに必要なのは、自尊感情や自己有用感です。自分を大切にする心、自分が人の役に立っているという実感です。そのためには、学校の勉強や部活だけではなく、多くの「体験」や「出会い」が必要ではないでしょうか。
教え子のこと
私の教え子に、中学時代の震災学習がきっかけとなって自主的なグループを立ち上げ、自作の紙芝居で震災伝承活動をしている子どもたちがいます。メンバーは、地域調査で漁師を訪問した際、「中学生は日本の宝」と励まされ、被災者との交流会では、町内会長さんから「寿命が延びた」と感謝の言葉をもらいました。褒められ、励まされたことが大きな自信に繋がりました。大学生になったある子は、「将来、小学校の先生になって震災のことを伝えたい」と力強く語っています。地域での学びや体験、出会いから目標ができたのです。
親にできること
子どもの“世界”は狭いです。受験勉強、部活、塾中心の生活ではそうなります。学校で学ぶのは世の中の出来事のごく一部。保護者のみなさんには、子どもの個性を認め、可能性をいくつも示してほしいと願っています。多様な世界を知れば、子どもはより主体的に自分の生き方を追求するようになるでしょう。
モネは、狭い島から飛び出て、多くの人と出会う中で自分のモデルを見つけました。そんな体験を思春期の子どもたちにさせたいものです。
(※1)家族にケアを要する⼈がいる場合に、⼤⼈が担うようなケア責任を引き受け、家や家族の世話、介護、感情⾯のサポートなどを⾏っている18歳未満の⼦ども。
(※2)セクシュアルマイノリティ(性的少数者)を表す言葉で、性的指向や性自認を意味する英語の頭文字をとって作られた名称。
みやぎ教育相談センター
所長 瀬成田 実
38年間中学校教師を務め、2021年4月から現職。教え子の震災伝承活動のサポートも続けている。
みやぎ教育相談センター
いじめ・不登校・進路などの相談に応じています。
TEL 022-272-4152 月~土曜10:00~17:00(土曜は15:00まで)