くらしに、ひと呼吸

今月のテーマ③“孤独”、“孤⽴”と ソーシャルキャピタル

 どうしてどのお宅でも、毎回こんなにお茶がたくさん出てくるのだろう?⽯巻を訪れたばかりのころ、さまざまな⽅のご⾃宅を伺うなかで感じたことの⼀つです。今思い返すと、それはとても⼤切な機会だったと気付かされます。

“孤独”“孤⽴”が進む現代の日本社会

 ⽇本では38・0%の世帯が単⾝世帯(令和2年国勢調査)であり、これは⽇本の世帯構成で最も多く、さらに増加が⾒込まれています。そのため、“孤独”を感じやすく、“孤⽴”しやすい社会になってきています。“孤独”や“孤⽴”は、健康⾯に悪影響をもたらすことが多く報告されています。皆さんも思い当たるエピソードが頭に浮かぶのではないでしょうか。

交流し、つながる東北に根付く文化

 ⼀⽅で、東北は⼈とのつながりが強い地域です。東⽇本⼤震災の際に初めて東北に訪れた私は「お茶っこ」の⽂化に⾮常に驚かされました。東北の⽇常には⼈々が⾃然と交流し、つながる機会が深く根付いているのです。この東北の⽂化には、これからの⽇本社会を⽀えるヒントがあるのではないかと考えています。

健康状態に影響を与えるソーシャルキャピタル

 「お茶っこ」文化にみられるような人と⼈とのつながりは、ソーシャルキャピタル(社会関係資本)と呼ばれます。ソーシャルキャピタルは、性別や年代によって異なり、また健康状態に⼤きく影響を与えることが知られています。
 例えば、男性は⼥性よりも⼈との交流が少なく、社会的に孤⽴する割合が⾼いとされています。⼥性はお茶飲みを⽬的に集まることができるのに対し、男性は特定の⽬的がないとなかなか集まりにくいという特徴があります。
 皆さんの周りでは、どこに⼈とつながる機会があるでしょうか?例えば、農作業、公⺠館、図書館、地域サロン、認知症カフェ、ボランティア活動、スポーツ、環境保全活動、趣味の集まり、地域⾷堂などが考えられます。まだまだほかにも、思いもよらないところに絶好の場所やコミュニティがあるかもしれません。こうした機会に触れること自体が、⼤切な取り組みです。
 私⾃⾝も、仕事と家族以外に、いくつかの活動に参加しています。未知のことを知り、新たな⼈と出会うことは楽しいものです。そして、それが⾃分やほかの誰か、さらには社会の役に⽴つことは、とても嬉しいことです。慣れ親しんだ「お茶っこ」を通して、また新たな趣味の活動に飛び込んで、皆さんの毎日に、こうした楽しさや嬉しさが生まれて、健やかな日々が続いていくことを願っています。

一般社団法人りぷらす 代表理事・理学療法士 橋本 大吾

茨城県出身。東日本大震災を機に、当時住んでいた埼玉県から石巻市に移住し、2013年1月に一般社団法人りぷらすを創業、またリハビリ施設を開設した。身体づくり・仲間づくり・居場所づくりをテーマに活動を展開している。

一般社団法人りぷらす 代表理事・理学療法士 橋本 大吾先生