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対話でつながる。言葉を伝える。3.11を忘れない

対話でつながる。言葉を伝える。3.11を忘れない

東日本大震災の記憶をそれぞれの視点で語り、対話や交流の中で「ありのままを伝えること、気づくこと」を大切に活動している3人に活動にかける想いをお聞きしました。 撮影場所:マルホンまきあーとテラス(石巻市複合文化施設)

忘れることなく、共に前へ進む生協の役割

東日本大震災から12年。当時幼かった子どもたちは若者へ成長し、震災を知らない世代も生まれ、時の流れとともに記憶の風化が懸念されています。みやぎ生協・コープふくしまは、この未曾有の経験を忘れることなく次世代へ伝えることが大切と考え、被災地訪問やさまざまな企画を行っています。その中で、若者が当時の経験を話す場として、当時子どもだった自身が何を考え震災と向き合ってきたのかを知る機会を設けています。
今回は、語り部となった若者の活動にかける想いや、そのきっかけについてご紹介します。

若者の視点で語られる震災 風化ではなく アップデートという考え方

小さな命の意味を考える会
佐藤 敏郎さん

東日本大震災当時、わたしは宮城県女川町で中学校教諭として勤務しており、石巻市立大川小学校(※)で次女を亡くしました。2013年に「小さな命の意味を考える会」を立ち上げ、大川小で起きたことを伝える活動を全国で行いながら、若者が自由に震災を語れる場を応援する活動もしています。

震災は大人の目線で語られることがほとんどです。12年が経ち、記憶の風化が課題となる中「復興と風化は表裏一体」「風化ではなく、震災の記憶をアップデートする」と言った若者の言葉にはっとしました。型にはまることなく、伝える角度は人それぞれでいいのだと気づかされました。若者たちは、さまざまなコミュニティを展開しながら柔軟に活動の場を広げています。今後も若者の持つしなやかさで、地域や世代を超えてその想いを伝えていってほしいですね。

(※)大川小学校は大津波により児童74人、職員10人が犠牲になりました。

2022年被災地スタディツアーの様子

佐藤さん、清水さん、西城さんが活動しています
一般社団法人 Smart Supply Vision
「未来をつくる声を届けるプロジェクト」のオンラインライブ「ソナエトーク」など、若手の語り部が主体となった、参加型企画も。
⇒ 詳細はWebをチェック

未来の命を守りたい若者が語る震災の記憶

「語り部」として、震災当時子どもだった自身の経験を「今の言葉」で発信している、2人の想いをご紹介。


福島県浪江町出身
清水 葉月さん(震災当時高校2年生)
一般社団法人Smart Supply Visionにて、「子ども・若者ファシリテーター」として活動中。「未来をつくる声を届けるプロジェクト」や、自身も語り部として、さまざまな場で対話や交流を行う。

語り部は、伝えるための表現の一つ。やわらかく、ゆるくつながる場を

震災直後、福島県から千葉県への避難・転校生活を送る中で、津波や福島第一原子力発電所事故の被害を目の当たりにした自分と、その後の日常が戻りつつある周囲との間に距離を感じ、気持ちを話せない息苦しさがありました。そんな時、大人が対話の橋渡しになってくれたことがきっかけで、話せる環境と受け止めてくれる聞き手の大切さに気がつきました。その後宮城県女川町・石巻市での子ども支援に関わる中で出会う子どもたちの「家族や学校で震災について話せない」「知りたくても知る機会がなかった」という声を知り、現在の活動でも「気軽に話せる場と聞き手」を特に意識しています。それぞれの経験に大・小はなく、誰もが語り部であり、自分の言葉で話すことが「伝える」上で大切だと感じています。大切な話を当たり前に話せる雰囲気や機会づくりにみんなで取り組むことで、開けていく未来をつくっていけたらと思います。

石巻市門脇小学校にて


宮城県石巻市出身
西城 楓音さん(震災当時小学2年生)
「子どもの安全を考える日和幼稚園遺族有志の会」での活動、また語り部として自身の経験を伝える活動をしている。

語り部活動が家族との会話のきっかけに。話すことで未来の命をつなげたい

小学校2年生の時に震災で大切な妹を亡くしました。当時は家族にも気を遣わせてしまうと思い、月日が経っても震災の話にはなるべく触れないようにしていたと思います。高校生になり、通っていた児童館で清水さんに出会ったことなどがきっかけで、2021年7月から語り部の活動などに参加し、話すことで気持ちが整理されていくのを感じました。語ることは膨大なエネルギーが必要で、時には当時を思い出し辛くなることもありますが、語り部をきっかけに、家族と当時を思い出しながらよく会話をするようになりました。震災で大きなものを失いましたが、その後に色々な経験や出会いがあったのも事実です。いつ災害が起こるかわからないからこそ、何気ない日常や、家族や友人を大切にしてほしいと思います。わたしの話を聴いた方が自身の大切な人と会話をするきっかけや行動することにつながり、未来の命を守る一助になれたら、と願っています。

2022年11月2日
若い震災語り部のお話を聴く会


⇒ 詳しくはみやぎ生協3.11を忘れないをチェック