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東日本大震災から10年 これから、ともに歩むために

東日本大震災から10年 これから、ともに歩むために

東日本大震災から10年目となる2021年。この節目の年に、「私たちの今」「知ること」「未来」をテーマに、宮城県、福島県でそれぞれの想いを胸に活動してきた人々にお話をお聞きしました。

今、そして未来へ私たちがこれからすべきこと

2011年3月11日14時46分。巨大地震と大津波、東京電力福島第1原発事故により、私たちのくらしは大きく変わりました。東日本大震災、あの日から10年。住まいやインフラ整備が進む一方で、いまだ故郷に戻ることができずにいる方々もいる現在、10年という年月はそれぞれの地域や被災者によって違ったものとなっているのではないでしょうか。未曽有の被害をもたらした東日本大震災を決して忘れず、さまざまな方々の、経験から得た教訓や支援を通してできたつながり、新たな取り組みなどを改めて振り返りながら、未来へともに歩む道をみつけていきましょう。

東日本大震災10年「Voice from 3.11 」 〜わたしたちの思いと願い〜

東日本大震災から10年を迎えるに当たり、多くの方々が震災に思いを馳せ、発する「ことば」から、改めて震災を広く考える機会として、みやぎ生協・コープふくしまでは「Voicefrom 3.11 〜わたしたちの思いと願い〜」企画に協力しています。集めた声は「一人ひとりのことば」として広く伝え、その言葉から大切なことを紡ぎ出して、次の世代へとつなげていきたいと思います。いまこの瞬間、東日本大震災に心を寄せている、すべての方々からの声を募集しています。ぜひご参加ください。

人とのつながりが生まれる場 「ふれあいサロン」 【くらし・人とのつながり 私たちの今】

東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示が徐々に解除され、故郷の再生に向けた動きが進む地域がある一方、避難を余儀なくされ仮設住宅で暮らす方も多い現状があります。コープふくしまでは、仮設住宅や復興公営住宅の集会所で定期的に「ふれあいサロン」を開催。参加者たちが誘い合わせて訪れる場をつくり、昔からのつながりが少なくなってしまった方たちへ、新たなコミュニティを築くきっかけをサポートしています。コープふくしまエリアリーダーの渡邊さんは、活動の中で一番大切にしていることは「人と人とのつながり、そして寄り添い続けること」と話します。


コープふくしまのみなさん(写真中央:渡邊千穂さん)と、葛尾村社会福祉協議会のみなさん

細く、長く、一歩一歩 【くらし・人とのつながり 私たちの今】

「ふれあいサロン」では、絵本の読み聞かせや手遊び、体操を通じて、人と顔を合わせるきっかけを作っています。「私たちスタッフ側も、この10年各地の仮設住宅のみなさんに受け入れてもらえ、ボランティア活動をさせてもらっているので、感謝の気持ちでいっぱいです。震災後から今までを振り返ると、長かったようで早かったと感じています。これからもなるべく人が集まれるよう工夫しながら、人とのつながりを感じられる場として活動を続けていきたいです」と、現在、そしてこれからの未来を見つめています。

「ここに来てみんなでおしゃべりするのが、何よりの楽しみです」とサロンに参加している方には笑顔がこぼれます

地域と共に歩む大切な場所であの日の記憶を語り継ぐ 【それぞれの経験から知ること】

東日本大震災で壊滅的な被害を受けた宮城県名取市閖上地区。「津波復興祈念資料館閖上の記憶」では、2012年春の開設以来、心のケアの拠点として被災者と共に歩み、震災の記憶と命の大切さを伝え続けてきました。丹野祐子さんは同館立ち上げの発起人であり、現在は語り部として活動されています。不定期に開催している「語り部の会」は、地元住民の方が語り部となり、震災当日の体験を語る場。語ることで心の整理がついたという方もたくさんいます。「私もその一人です」と話します。
丹野さんご自身、当時13歳だった息子さんを津波で失うという過酷な体験をされました。生きる希望を失いかけた中で、気持ちを消化するため、いつしかあの日の体験を語るようになったと言います。「息子を助けられなかった後悔は消え去ることはありません。でもその想いを封印するのではなく、受け止め、あの日のことを残し、伝えていくことが、自分の務めだと思うようになったんです。そういう意味でここは、震災の記憶と10年分の想いを素直な気持ちで語れる大切な場所です」。
あの日から10年。閖上の町はかさ上げや新しい道路の工事が行われ、新たな街並みが作られています。「震災の痕跡がなくなっていけばいくほど、言葉で伝えることがより大事だと感じます。被災者や遺族になってから気づいても遅いんです。私と同じ後悔をする人がいなくなってほしいという願いを込め、あの日のこと、そして命の尊さや防災の大切さを語り続けていきます」。丹野さんは決意を新たにしています。


発災当時のことや10年の歩みなどについて語る丹野さん。「10年経ってやっと生きていてよかったと思えるようになりました」という言葉が印象的です


閖上の記憶生徒の遺品や閖上小学校の児童が制作した閖上の町のジオラマ作品など、館内には震災に関する資料が数多く展示されています

津波復興祈念資料館 閖上の記憶
住所/宮城県名取市閖上5-23-20(メイプル館南側)
☎022-738-9221(認定NPO法人地球のステージ)
営業時間/10:00~15:00、日曜・祝日9:00~15:00(第3日曜は13:00~)
休館日/木曜(木曜が11日に当たる場合は開館)
※「語り部の会」等の各種プログラムについては要問合せ

活動の柱は「寄り添う支援」地域を元気にする橋渡し役に 【未来へともに歩むために】


2011年5月1日、東日本大震災の被災者への継続的な支援とその活動に関わりたい学生のために設立された、「福島大学災害ボランティアセンター」。震災直後から、炊き出しや被災者の支援に奮闘し、現在も復興公営住宅で生活する方々への支援や子どもたちへのサポートなど多岐にわたるボランティア活動を行っています。「たくさんの人との関わりの中で学ぶことがたくさんあります。ハード面・ソフト面それぞれに復興が進み、震災前の様に福島に人が集まるようになってほしいです」と話します。


出身も今までの経験もそれぞれだけど、想いはひとつ
4年生の前田悠さん(写真右はじ)と3年生の林崎雪音さん(写真右から2番目)と福島大学災害ボランティアセンターのみなさん、2020年度登録者数は約100人です

これから自分達がすべきことは想いを引き継ぎ、次に伝えること 【未来へともに歩むために】

「先輩たちが培ってきたつながりや想いを引き継ぎ、”寄り添いの活動”を地道に継続していきたい」と語るのは、4年生の前田悠さん。3年の林崎雪音さんは、「10年前、私も避難所で学生ボランティアの方に心を助けてもらいました。これからは活動を通じて、心の復興に寄り添える恩返しができればうれしいです。今は活動を続けることで、住民のみなさんと繋がる関係性を築けたことが何よりの宝です」。被災者・支援者という立場を超えた人と人とのつながりを実感したという学生のみなさん。今後も変わりゆくニーズを受け止めながら、活動を幅広く展開していけたら、と未来を見据えます。


2019年12月28日「横堀平団地餅つき会」の様子

他業種での経験を活かした未来へつなげる仕組み作り 【未来へともに歩むために】


漁業生産組合浜人代表であり、一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン代表理事でもある阿部勝太さんは、石巻市十三浜生まれの若手漁師です。震災の2年前、25歳の時に家業を継ぐも震災によって自宅・船・工場の全てを流されてしまいました。自身も漁師として再スタートを切る決断を迫られる中で、「漁業全体を元気にしたいという想いで、今まで個人で行動することが当たり前だった漁業を見つめ直しました。若い力を合わせて漁師自ら商品開発や企画に携わり、商品をPRしたい」と、新しい取り組みを始めました。


古今東北の売り上げの一部を若手漁師育成に活かしています

震災後から、若手漁師33人増目指すは100人 【未来へともに歩むために】

漁業をさらに盛り上げるべく、後継者不足の解消と、若手雇用の創出のため、不安定になりがちな漁師の所得と休暇の安定を目指し改革を行っている阿部さん。「若手漁師の育成のため8棟のシェアハウスを建て、県内外からの就職サポートと、親方に学び受け継ぐ場づくり、人とのつながりを支援しています」と、漁業の未来を見つめた活動に力を入れています。「生産と加工、そして消費者の声を反映しやすいというメリットを活かして、おいしい商品をお届けしたいです」と、今後の展望を語ります。


2016年、古今東北のスタートと同時に、ワカメや昆布の取り扱いが始まりました