くらしに、ひと呼吸

大人の肥満を考える~豊かな地域の食材の力を借りて自分の体をリセットしましょう~

宮城県の特定健診の結果

2008年度から始まった特定健診(メタボ健診)の結果、宮城県は「メタボリックシンドローム該当者及び予備群」の割合が、2008年度から12年連続全国ワースト3位以内と“脱メタボ”が県民の課題となっています。2013年度に策定された「第2次みやぎ21健康プラン」では、「歩こう!あと15分」「減塩!あと3g」「めざせ!受動喫煙ゼロ」を重点目標に掲げていますが、2019年度は、宮城がワースト2位という残念な結果でした。
しかし、今回のコラムは「食事を減らしましょう」や「運動しましょう」という話ではありません。食習慣で、自分の体をリセットしましょうという提案をしたいと思います。

体をリセット

【1.自然な「だし」を活用しよう】
だしのおいしさは味覚の一つである「旨み」が大きく関係しています。旨みはすべてのだしに共通であり、代表的なものとしてグルタミン酸やイノシン酸などが存在します。これらは一緒に扱うことによって相乗効果が生じ、よりおいしさを感じることができます。
かつお節からとった抽出物は、体重の増加および脂肪蓄積の上昇が抑制されたとの報告があり、かつお節に含まれるヒスチジンとグルタミン酸には、抗肥満効果が認められました。このように、食欲抑制、内臓脂肪分解、体熱生産促進が期待されることから、ヒスチジンは食欲を抑制し、脂肪の燃焼を促進するので、ダイエットにも役立つでしょう。
一方、コンブの旨みは、アミノ酸系のグルタミン酸です。グルタミン酸についても、消化液分泌や消化管運動に影響を及ぼしている報告がされています。ラットにグルタミン酸ナトリウム溶液を飲料水の代わりに与えたところ、摂餌量に差がなかったにもかかわらず、対象に比べて皮下脂肪量や内臓脂肪量が低下したと報告されています。

【2.食材の解毒力を借りよう】
疲れがたまった時、体が重いと感じた時は、胃腸を休めることも大切ですが、私は自然の恵みをいただくということをお勧めします。昔から日本人は解毒を季節ごとに行って来ました。冬は七草、クレソン、春はふきのとう、よもぎ、夏は小松菜、ワサビ、秋はかいわれ、かぶの葉、いずれも肝臓において解毒を行う酵素「チトクロームp450」を活性化させる働きがあると言われている食品です。それが人の手によって丁寧に作られたものであれば、なおさら効果大です。

【3.食べる時に呼吸を整えよう】
最後に、現代は食欲を感情によってコントロールしている可能性があります。嬉しい楽しいといっては食べ、悔しい悲しいといってはやけ食いする。寂しいという感情を食で埋めている人もいるでしょう。ストレスが原因で食欲中枢が誤作動を起こしています。
感情の乱れは呼吸の乱れです。ストレスはなしにはできませんが、呼吸を整えて対処すれば、人間の体は思考回路も内臓もそして心も正されると私は習いました。この整った呼吸ができて初めて、「人としての正しい判断」ができるのです。食事の際にもこの呼吸は大切で、正しい呼吸をもって食事にあたれば、内臓が正しく機能して、その人の体に必要な栄養素を、吸収することでしょう。

仙台白百合女子大学
人間学部健康栄養学科
教授
佐々木 裕子

宮城県の長年の課題である「メタボ対策」や「減eco」、「和食」の普及に力を入れて取り組み、生協の食生活学習会でも講師を務める。

仙台白百合女子大学<br>人間学部健康栄養学科<br>教授<br>佐々木 裕子先生