くらしに、ひと呼吸

身体の声を聴こう!~新しい生活様式は食の「伝統と革新」~

テレビやインターネットでは、たくさんの情報があふれています。私たちはその情報に振り回され、日々不安を抱いています。しかし、一番の情報は自分の身体が持っています。肉体は大親友なのです。みなさんは、どのように自分の身体とコミュニケーションをとっていますか?

まずは昔の人がどのようにして肉体の声を聴いていたのかを考えてみましょう。そのひとつに五節供があります(以下、和食文化国民会議のホームページより引用)。五節供とは、一般的に「七草の節供(1月7日)」「桃の節供(3月3日)」「菖蒲の節供(5月5日)」「七夕の節供(7月7日)」「菊の節供(9月9日)」などと呼ばれ、合わせて「五節供」とされました。このように、昔は神仏に健康を願い、自分の身体の声を聞き、厄落とし(体に不要なものを出す)習慣がありましたが、忙しい現代では忘れられがちですね。

ここで、話をわかりやすくするために、裕子風現代物語にアレンジしてみました。縁側におばあちゃんと孫が座って日なたぼっこをしています。一緒にイメージしてみましょう。

 「3月は桃の節句でひな祭りだよ」

おばあちゃん 「どうしてひな祭りにはちらし寿司を食べるか知ってる?」

 「女の子が幸せになるように?」

おばあちゃん 「ちらし寿司は綺麗じゃろう?卵の黄色、桜でんぶのピンク、いんげんの緑、あれはなぁ、目の検査なんじゃよ」

 「えーほんと? あら、お庭で鳥が泣いてるよ?」

おばあちゃん 「きっと、うぐいすじゃ、ホーホケキョ?これは耳の検査なんじゃな」

 「えー、あとは?あとは?」

おばあちゃん 「桜餅の葉っぱは香りがするじゃろう?ハマグリの潮汁はだしの香りがするかい?これは鼻(嗅覚)の検査じゃよ。端午の節句は、柱にせいくらべの傷をつけて、身長を測るんじゃ。今は健康診査や病院で診てもらえるけれど、昔はそうやって自分の成長の状態を季節で確認したんじゃ。炭に火入れをする日(暖房を使う日)も決まっていたし、新米を食べてよい日にちも決まっていた。もし、それより前に暖房が恋しくなったりすれば筋肉が衰えてきている可能性もあるからのう。着物の帯はコルセットのようにしっかり締めれば腰痛予防にもなったんじゃ。畳にきちんと正座すれば、腹筋背筋が鍛えられ、姿勢もよくなるだろうよ」

 「井戸に水を汲みにいったり、昔の生活は、毎日が筋トレみたいだね」

おばあちゃん 「食べ物だってそうじゃ、食事とは元々手をかけるものだった。自分の口にいれるものは丁寧に作るもんじゃ。時短すれば、自分の身体もどんどん弱くなってしまうかもよ」

 「えーでも私は今のファストフードの方がいいなぁ」

おばあちゃん 「どちらがいいというものじゃないね。上手に組み合わせればいいんじゃ。そうそう、春はヨモギやふきのとうで冬にため込んだ体に不要なものをデトックスする時期なんじゃよ」

さあ、どうでしたか?みなさんも昔ながらの食習慣と新しい生活様式を上手に組み合わせてみましょう。100点満点の食事、正解なメニューはありません。先人の力を借りるのもひとつですが、それだけでは今のウィルスの時代は乗り切れないのも事実でしょう。キーワードは、食の「伝統と革新」です。

仙台白百合女子大学
人間学部健康栄養学科
教授
佐々木 裕子

宮城県の長年の課題である「メタボ対策」や「減eco」、「和食」の普及に力を入れて取り組み、生協の食生活学習会でも講師を務める。

仙台白百合女子大学<br>人間学部健康栄養学科<br>教授<br>佐々木 裕子先生