くらしに、ひと呼吸

あなたやお子様は環境過敏症ではないですか?~その2~

7月号からのおさらい

環境過敏症って何?

環境過敏症(環境不耐症)は、通常では感じないレベルの生活環境中のさまざまな要因により、多臓器にさまざまな不定愁訴を訴える健康障害と考えられています。2回目の今回は、私の30年間の疫学調査でわかったことの一部を簡単に説明します。

さまざまな環境過敏症その関係は?

私の多くの調査結果をまとめると、以下のことがわかりました。
①子ども、女性、および何らかのアレルギー疾患のある人は、新築・リフォーム後にシックハウス症候群(SHS)を発症しやすい。
②SHS段階で、早期に適切な住環境改善をすれば、症状は治癒・緩和する。
③住環境改善対策が遅れると、化学物質過敏症(MCS)や電磁過敏症(EHS)に移行してしまい治りにくくなる。
④症状経過で最も多いのが「SHS→MCS→EHS(32.4%)」、次いで「MCS→EHS(21.3%)」でした。
⑤MCSとEHS合併者は症状が重く治りにくいことがわかりました。
すなわち、環境過敏症も早期発見・早期治療・早期予防が重要なことが確認されました。

生活環境の変化と環境過敏症の関係は?

日本人の生活スタイルと環境過敏症の関係を調べるために、2012~2015年と1999~2003年(10年前)の調査結果を比較しました。その結果、日本人全体の生活スタイルは、10年前と比べて、「香料入り製品使用」が約4.4倍、「仕事・趣味での化学物質使用」が約3倍、「柔軟剤使用」が約1.6倍、「医薬品の服用」が1.6倍に増加していることが確認されました。
また、この生活スタイルの変化により、MCS患者は10年前と比べて、
①仕事を辞めざるを得ないような重症者が約3.8倍に増加、アレルギー性鼻炎合併は約5.3倍、気管支喘息合併は約5.2倍、アトピー性皮膚炎合併は約3.8倍、食物アレルギー合併は約2.6倍に急増していました。
②MCSの発症要因は、10年前は「新築・リフォーム(68.9%)」、「仕事・学校での化学物質使用(17.5%)」、「農薬・殺虫剤(11.7%)」でしたが、新調査では、「新築・リフォーム(35.1%)」、「電磁曝露(26.1%)」、「香料入り製品使用(20.7%)」、および、「医療関係での化学物質曝露(7.2%)」と、新しい発症要因が増え多様化していました。
すなわち、私たちの生活環境の変化が、本症患者の急増の要因となっていることがわかりました。新型コロナ禍では、消毒剤曝露で化学物質曝露が、パソコンやスマホ使用の機会が増えるため、患者の急増が予測されます。
そこで最終回は、どうしたら“あなたやお子様が環境過敏症にならないで済むか?”について説明します。

尚絅学院大学名誉教授
東北大学大学院歯学研究科研究員
室内環境学会環境過敏症分科会代表
日本臨床環境医学会環境過敏症分科会代表
医学博士、歯学博士
北條 祥子

東北大学医学部薬学科卒業後、東北大学歯学部口腔生化学、尚絅女学院短期大学・尚絅学院大学、早稲田大学応用脳科学研究所で生活環境と健康に関する研究・教育に従事。専門は環境医学・疫学。

尚絅学院大学名誉教授<br>東北大学大学院歯学研究科研究員<br>室内環境学会環境過敏症分科会代表<br>日本臨床環境医学会環境過敏症分科会代表<br>医学博士、歯学博士<br>北條 祥子先生