自己理解あってこそのアンガーマネジメント
怒りの記録「アンガーログ」とは
ここ一週間を振り返って、どのようなことに怒りましたか。思い出せますか。「イライラが多すぎて思い出せない」というお声をよく聞きます。
怒ったことを覚えていないことがマネジメントしにくい理由の一つ。わたしたちは毎回同じセリフや態度、強さで怒ることを繰り返しています。
「アンガーログ」とは怒りの記録のことです。イラッとしたら、できるだけその場でささっと記録します。
すると、自分の怒りの傾向やパターンが理解でき、怒りへの対処がしやすくなっていきます。書くことで冷静になれます。ぜひ一度取り組んでみてください。
参考文献:『アンガーマネジメントトレーニングブック2024年版』ミネルヴァ書房
わたしたちは誰にも怒っていませんしどんな出来事にも怒っていません
怒りの原因は「誰か」や「出来事」ではありません。自分の価値観や願望などを象徴する「べき」という言葉。それらが目の前で裏切られた時に怒りを感じています。怒りの原因が誰かや出来事であればそれらに振り回された状態。自分の「べき」なら変えることができます。ここが重要です。
ただ、「べき」は本人にとって全部正解(すべての人の正解ではない)、程度問題(同じ「べき」でも人によって程度が違う)、変化する(時代、立場、場所によって変わる)ため、扱いが難しいことも知っておいてください。
アンガーログをつけるとき「べき」も書き出すと、自分の価値観がわかってきます。アンガーマネジメントは自己理解ができてこそ上達していきます。
怒りの大きさと心身の関わりとは
同じ「べき」が裏切られても、強く怒るとき、あまり気にならないときがあります。ライターモデルで怒りが生まれるメカニズムを説明できます。自分の「べき」と違うとき、ライターの着火石をカチッと回し、火花を散らします。その火花を燃え上がらせるガスがマイナスの感情(悲しい、苦しいなど)と、マイナスの状態(睡眠不足、空腹など)。怒りの大きさは心と体の状態に影響を受けています。このしくみがわかると自分でどう行動すればよいかについても理解できることでしょう。
アロマの香りをかぐ、コーヒーを飲む、ストレッチをする、温泉に行くなど、時間の長さと場所を組み合わせてメニューを用意し、マイナスの感情をためないよう気分転換します。また、眠かったら寝る、空腹なら食べればいいのです。アンガーマネジメントは誰でも取り組めるスキルなのです。
(一社)日本アンガーマネジメント協会 アンガーマネジメントコンサルタント® 川上 淳子
2016年4月より、Edu Support Office代表 元宮城県公立小学校教員。元国立大学法人宮城教育大学教育学部非常勤講師。2014年よりアンガーマネジメントを学び、2016年3月退職。著書に『教師のためのケース別アンガーマネジメント』、『高齢者に「キレない」技術』共に小学館刊。