くらしに、ひと呼吸

アンガーマネジメントができる人に

機嫌で怒っていると

 アンガーマネジメントのコツは「怒る必要があること」「怒る必要がないこと」を線引きすることです。可視化するために、三重丸の図を使って考えていきます。その三重丸の一番内側が“1許せるゾーン”。前号で取り上げた、自分の「べき」と同じ、百点満点の状況です。ここでは怒っていません。その外側が自分の「べき」とちょっと違うものの“2まぁ許せるゾーン”。その外側が自分の「べき」と全く違う“3許せないゾーン”です。
 実は三重丸が自分で見えておらず、2と3の境界線を機嫌にしていることが多いのです。
 機嫌がよいと2を広げて怒らないのに、機嫌が悪いとぎゅっと縮めて怒ってしまいます。軸がブレブレの状態です。怒られた人は「前は怒られなかったのに、なぜ今怒られているの」と不信感を抱いてしまうのです。

三重丸を描き、3つの努力を

 例えば、9時にと約束した友人との待ち合わせ。相手は何時何分に来るべきでしょうか。私の百点満点は8時55分。8時30分は早すぎて許せない。8時59分ならまぁ許せるけど、9時ぴったりや9時1分はあり得ないと怒っています。このように三重丸を描いて分類してみてください。
 挨拶のしかた、掃除のしかた、提出日、お子さんが宿題を終える時刻など、すべてに三重丸があるのです。
 さて、自分の「べき」は自分にとっては百点満点の大正解。でも、それを握りしめていると、他への許容度が低くなります。大切なのは、“まぁ許せるゾーン”を広げる、一定にする、自分の三重丸を言葉にして説明する、この3つ。「わかっているはず」ではなく、努めて丁寧に伝えます。

怒りの連鎖を断ち切ろう

 私が長男を出産した直後の、保健師来訪時のこと。かけられた言葉がありました。
「お母さん、全部がんばろうとしないでね。お惣菜買って来てもいいんだよ」と。「子どものすべてを見るべき」という頑なな思いを手放し、その後、生協のお惣菜、個人宅配を利用し、共働きを全うしました。
 皆さまが大事にしてきた価値観を、今一度見直してみませんか。何をどうするのかを自分で決めてこそ「くらしに、ほっとひと呼吸」できます。その幸福感は誰かが与えてくれるものではありません。
 日本アンガーマネジメント協会の理念は「怒りの連鎖を断ち切ろう」。お互いの「べき」を認め合うことで人権を尊重し、あらゆるハラスメントや差別のない社会を創っていくことができます。
 このシリーズが、アンガーマネジメントができる人が増えていくきっかけになりましたら幸いです。

(一社)日本アンガーマネジメント協会 アンガーマネジメントコンサルタント® 川上 淳子

2016年4月より、Edu Support Office代表 元宮城県公立小学校教員。元国立大学法人宮城教育大学教育学部非常勤講師。2014年よりアンガーマネジメントを学び、2016年3月退職。著書に『教師のためのケース別アンガーマネジメント』、『高齢者に「キレない」技術』共に小学館刊。

(一社)日本アンガーマネジメント協会 アンガーマネジメントコンサルタント® 川上 淳子先生