対人関係の悩みについて
余計な気遣いを減らしましょう
心の動きが悪くなったとき、心にも潤滑油が必要になります。10月から12月の3回にわたって、心の潤滑油となるお話をお届けいたします。
日常生活の中で対人関係の悩みは、悩みの大部分を占めます。「人の悩みはすぺて人間関係の悩み」と言っている心理学者がいるほどです。対人関係で悩むとき、「相手が自分を悩ませている」と考えてしまいがちです。しかし実際は「自縄自縛」で、自分の心を窮屈にしているのは自分のこだわりであることに気付くことが必要です。『おもてなし』の気遣いは他人との関係をスムーズにする潤滑油ですが、気遣いが過ぎると自分の心が動きにくくなります。気力は心の経済力と考え、まずは余計な気遺いを減らしてみましょう。
心の余裕づくりをしましょう
心配ことがあるときやストレスが溜まっているときは、相手の心が読み取れなくなり、周囲との軋礫を生じやすくなります。心の余裕づくりには、食事や睡眠など規則正しい生活が必要です。栄養不足や睡眠不足は、自分では気づかない自律神経の不調を生じさせ、心の処理能力を低下させる要因となります。また、意識して楽しみや気分転換、気晴らしなどを日常生活の中に取り入れておくことで、心には余裕が生まれます。
見方や考え方を変えてみましょう
「どうして自分の気持ちをわかってくれないのだろう」と悩み、自己防衛のために攻撃的になる方を多く見かけます。人は生まれ育った環境も違えば、現在の生活環境もお互い違うのですから、同じものを見ていても同じように感じているわけではありません。相手に自分を理解してほしいという思いは誰でもありますが、考え方を変えてもらうためには大きな精神的エネルギーが必要となります。相手を変えるより、自分の見方や考え方を変える方がずっと簡単にできます。
ともに生きる願いを心がけてみましょう
心理学では、無意識がその人の行動に大きな影響を与えると言われます。長く車を運転すれば運転が上手になるように、心がけや願いを持ち続けることで、無意識に心の運転技能も向上してきます。次のような心がけで対人関係の心を磨きましょう。
感情をコントロールすること/職場や家庭で上手な演技を心がけること/相手の良いところを見つけ、お互いに認め合うこと/意見の妥協点を探す工夫をすること
人の姿は「十人十色」でも、「人の心は九分十分」と言われ、ほとんど変わりません。わたしたちが向かつているところ、心の奥で求めていることは、みな同じでしょう。生協の理念「_人は万人のために、万人は_人のために」を思い起こし、人間関係の悩みを吹き飛ばしましょう。
齋 恒夫 院長
日本医師会産業医、精神科専門医(日本精神神経学会)。独立法人労働者健康安全機構 宮城産業保健総合支援センター相談員。メンタル疾患でのさまざまなケアや診療を行っている。