くらしに、ひと呼吸

マスクと子育て

ステイホームでいいのでしょうか

新型コロナウィルス感染症の影響でステイホームと言われ、子どもたちの戸外活動がめっきり減りました。運動不足とゲーム漬けが深刻です。家で過ごす時間が増えて、大人もストレスがたまり、そのギクシャクが子どもへの虐待にまで及んでいます。子どもへの虐待件数は2020年度には過去最高の10万人を超えてしまいました。屋外では無限に拡がる大気の中にウイルスは拡散して薄まります。密集さえ避ければ、マスク無しで遊べます。子どもへの標語は「捨てい!ホーム」でいかがでしょうか。
幸いに日本の新型コロナウイルス感染者のうち10歳未満児の占める割合は4月14日時点で2.9%と少なく、死亡例も報告されていません。コロナウイルスの表面にはたくさんのタンパクの突起が出ています。あの突起が、人の口や鼻の粘膜などの細胞表面の特定の受け皿にはりつき、細胞に入り込んで感染します。ところが子どもの粘膜細胞には受け皿が少ない。ですから大人が感染する量のウイルスにさらされても、比較的感染が少ないのです。

気が付いたら口で呼吸を

感染予防にと、子どもにマスクを強いると、息が苦しいのでついつい口で呼吸します。すると口が乾き、炎症がおこりやすく、歯につく歯垢も固くなって歯ブラシで落としにくくなります。それは歯肉炎や口臭にもつながります。
鼻からの呼吸なら鼻毛もあり、また、細かい動く毛が入ってきた飛沫やウィルスを外へ外へと出します。でも口で呼吸すると飛沫は容易に侵入し、それが続くと喉の奥の扁桃も腫れてきます。扁桃で塞がれて鼻からの空気の通りが悪くなり、ますます口呼吸が癖になります。そこでWHOとユニセフは5歳までのマスク着用にこだわらないようにと勧告しています。

子どもが学ぶ表情やことばをマスクで塞がない

乳幼児は人の表情を顔の、特に目と口から読み取っています。乳児では視覚はぼやけていますが、赤色には良く反応し、唇は目立ちます。また、ことばが活発になる1歳前では大人が会話する時、子どもの目が大人の口をじっと見ることが知られています。乳幼児期の早い時期から人の表情を読み取る機会がマスクに隠されて見えなくなっては大変です。さあ、子どもは風の子自然の子。空気が拡散してウイルスの心配のない青空の下でマスク無しで思い切り遊ばせ、語りかけましょう。

歯学博士
尚絅学院大学名誉教授
岩倉 政城

東京歯科大学卒業、東京医科歯科大学大学院修了、東北大学助教授、尚絅学院大学教 授、尚絅学院大学附属幼稚園長を経て現在に至る。 現、尚絅学院大学名誉教授、歯学博士。

歯学博士<br>尚絅学院大学名誉教授<br>岩倉 政城先生