くらしに、ひと呼吸

LGBTQ カミングアウトを受けた時には?

日本の調査においては、LGBTQ当事者は13人に1人(左利きやAB型の人の割合に近い)とも言われています。しかし、私が地域の講演会等でお聞きするのは、「そんなにいるの?」「出会ったことない」といった声でした。LGBTQ当事者は身近にいるはずなのに、周囲に打ち明けていない当事者が多くいるのだと感じています。それはどうしてでしょうか?今月号では、その要因の一つとして考えられる「カミングアウト」「アウティング」について触れたいと思います。

カミングアウトとは?

みなさんは、「カミングアウト」という言葉を聞いたことがありますか?カミングアウトとは、自身の性について、他者に打ち明けることです。現代の日本の社会においては、「異性愛」と「シスジェンダー」(性自認と生まれた時の身体の性が同じ)を前提とした関わりをもたれることが多くあり、LGBTQ当事者が自身の性について知ってもらうために、カミングアウトを必要とすることがあります。
私もカミングアウトを必要とする機会が、これまでに何度もありました。その一例が、とある職場でのことです。私は、性自認が「男性」でも「女性」でもないため、男女別のトイレや更衣室を使用することに抵抗を感じてしまいます。そのため事前に、担当者の方にカミングアウトをして、配慮してほしいことを伝えました。すると、丁寧に話を聞いてくださり、出勤日初日には、「職員間で情報共有を図り、環境を整えました」という旨を伝えてくださいました。もし、みなさんが私の立場だったら、このような対応をどう感じられますか?

アウティングとは?

ここで、カミングアウトに加えて「アウティング」という言葉についても知っていただきたいです。これは、本人の同意なく他者にその人の性について明かしてしまうことです。私は「情報共有を図った」というお話を聞いて、緊張や不安といった複雑な感情がわき上がりました。これはまさに、アウティングというものであり、人によっては悲しい気持ちにもなってしまいます。これまでにも、アウティングがきっかけで自殺を図ってしまった事例がニュースで報道されたこともありました。では、このとき担当者はどのように対応する必要があったのでしょうか?私の一意見ですが、事前に「職員間で情報共有をしてもよろしいですか?」と本人の同意を得る必要があったと考えます。

アウティングは絶対にしないこと

アウティングが問題となっている現在の社会において、LGBTQ当事者がカミングアウトをすることは、より困難になっているのではないでしょうか。まずは私も含め、みなさん自身が「アウティングを絶対にしない」と決めることが大切だと思います。相手の情報を第三者に伝える際には、必ず本人の同意を得た上で共有を図りましょう。そして、カミングアウトを受けた際は否定をせず「そうなんだね」「教えてくれてありがとう」のように、その人のありのままの性を受容していただきたいです。これからも、LGBTQ当事者が安心してカミングアウトできる社会の環境を、みなさんと一緒につくっていけたらと思います。

にじっぺ茨城代表
永瀬 大紀

福島大学にじいろサークル設立・元代表。筑波大学大学院障害科学学位プログラム在籍。LGBTQに関する理解啓発・居場所づくりの活動を展開する。

にじっぺ茨城代表<br>永瀬 大紀先生