あなたやお子様は環境過敏症ではないですか?
はじめに
農薬・殺虫剤・除草剤の開発により農業は効率化し、パソコン、携帯電話、無線LANなどの発明・普及により情報入手・発信が劇的に容易になり、私達は便利で豊かで快適な生活を送れるようになりました。その一方で、環境過敏症と呼ばれる健康障害患者の急増が問題になっています。特に、Withコロナ時代は、消毒剤の噴霧やオンライン作業の増加で、化学物質曝露や電磁曝露の機会が増えるため、患者の急増が予測されています。また、幼少期に環境過敏症を発症した患者は自閉症・多動症・学習障害の合併率が高いとの報告が増えています。
私は、約30年間、環境過敏症の疫学研究をしている4人の孫を持つ78歳の研究者ですが、「環境過敏症は便利な生活の裏側の健康障害であり、現代人なら、誰がいつ発症してもおかしくない。幼少期からの発症予防対策が必要である」と考えています。そこで、7月号~9月号の3回に分けて、環境過敏症に関して解説します。
環境過敏症とは?
環境過敏症の代表例はシックハウス症候群(SHS)、化学物質過敏症(MCS)、電磁過敏症(EHS)です。すなわち、環境過敏症とは、普通の人は何でもないような、身の回りの化学的要因(受動喫煙、塗料、農薬・除草剤、殺虫・防虫剤、芳香剤、柔軟剤等)、(音、光、低気圧、パソコン・スマホ・携帯電話基地局からの電磁波等)、および、生物的要因(カビ、ダニ、花粉、ウィルス等)により、いろいろな臓器に多彩な症状(睡眠障害、呼吸困難、咳、動悸、吐気、腹痛、下痢、失神、全身倦怠感、思考力・集中力低下、うつ気分、頭痛、めまい、痛み、四肢脱力など)が出る健康障害の総称です。アレルギー疾患と密接な関係があることが知られていますが、その発症メカニズムなどの病態は科学的に未解明なことが多いのです。
環境過敏症患者はどの位いる?
米国では、「"医師にMCSと診断された患者"は人口の12.8%、"医師に診断されたわけではないが自分でMCS患者と考えいる人"は25.9%存在し、その割合は10年前と比べて、それぞれ約3倍、約2倍に急増している」と報告されています。日本では、7425人を対象にした大規模な調査で「"MCSの疑いが強い人"は人口の4.4%存在し、12年前の調査時の0.74%と比べると約6倍にも増えている」ことが報告されています。2015年に北條が行った調査では「"MCSの疑いがある人"は約6%、"EHSの疑いが強い人"は3~5%、"MCSとEHS合併の疑いがある重症患者"は約1%存在した」ことを報告しています。そこで、私は日本でもMCS患者は急増していると考えています。次回は、北條が30年間実施してきた種々の調査結果から分かったことについて説明します。
尚絅学院大学名誉教授
東北大学大学院歯学研究科研究員
室内環境学会環境過敏症分科会代表
日本臨床環境医学会環境過敏症分科会代表
医学博士、歯学博士
北條 祥子
東北大学医学部薬学科卒業後、東北大学歯学部口腔生化学、尚絅女学院短期大学・尚絅学院大学、早稲田大学応用脳科学研究所で生活環境と健康に関する研究・教育に従事。専門は環境医学・疫学。