くらしに、ひと呼吸

仕事や家事が困難になったとき

10月号では「対人関係の悩みについて」11月号では「心が折れたときの動かし方」についてお届けしました。今回は、日常生活に支障が出るようになったときの対処法です。

まず心と体を休めてみましょう

精神的疲労が続くと、先が見えない不安感や意欲の低下だけではなく、頭痛やめまい、動悸、食欲不振など、体にもいろいろな症状が出てきます。心と体の関係は「心身一如」といい、影響を及ぼし合います。症状は心身を守るためのシグナルです。環境への適応が赤信号になっていますので、まずは心や体を休めて回復を図りましょう。

症状が改善しないときは治療を考えましょう

休養しても心の暴走が止まらないときがあります。眠ろうと焦れば焦るほど目が冴えるようなことは誰でも経験することでしょう。心が暴走したり、動きが悪くなって日常生活に支障が出るようになったときは、精神科や心療内科への受診をお勧めします。治療に抵抗のある方もおられますが、精神的症状を和らげるための薬(向精神薬)は心のアクセルやブレーキを調整してくれます。悩み続けるより治療を試みるのが症状改善の近道でしょう。

不適応の原因を考え対策を立てましょう

何事も問題が生じたときは原因究明と対策が必要です。心が適応を損なった原因はどこにあるのか、環境かそれとも自分の処理能力か、あるいは双方かを考えて対策を立てましょう。薬は適応を助ける対策の一つですが、職場や家庭など、環境の問題が大きい場合は環境への対策が必要です。また自分自身でとれる対策は何かを知っておくことも大切です。

適応力を高める生活を心がけましょう

心の処理能力の範囲で生活していれば症状は出ません。規則正しい生活は私たちの持っている適応力を高めてくれます。普段から適切な栄養、睡眠、運動や思考活動などに心がけるとよいでしょう。また処理能力を高めるため、心や体に適度な負荷を加えることも忘れてはならないことです。楽な生活ばかりしていると「浦島太郎」になってしまいます。

症状が改善したら心の経営をしましょう

生活方法の改善や治療によって症状が軽快しても、気力の無駄遣いをすれば症状は再燃します。家計では収入に見合わない支出はしないように、心も持っている気力以上に気遣いはできません。自分の適応力の範囲内で生活していくためには、気力の収支を考えた「心の経営」が必要です。どのような経営も、夢を持ち、プランを作ることから始まります。夢のあるイメージ作りで心を豊かにし、上手に心を経営していきましょう。

齋 恒夫 院長

日本医師会産業医、精神科専門医(日本精神神経学会)。独立法人労働者健康安全機構 宮城産業保健総合支援センター相談員。メンタル疾患でのさまざまなケアや診療を行っている。

齋 恒夫 院長先生